隣の部屋にはリクがいる。
でも、今さら彼には頼れないと思った。
リクを好きな気持ちに変わりはない、な のに、彼に深入りしたくないと、メイは 思う。
これまでリクは、メイのために動いてく れた。
“私なんかに根気よく付き合えるアイツ は、稀な存在だよ”
一年前は、リクの存在をわずらわしく 思っていたのに、今は、ありがたいと感 じ始めている。
毎日毎日、同じことの繰り返しに見える が、少しずつ、目に見えない小さな変化 が訪れている。
遠い未来。リクと、正面から向き合える 日が来るだろうか。
期待を裏切られるのも怖いが、今は、笹 原教授のカウンセリングに望みをかける しかない。
自分を救い出すのは、最終的に自分しか いないのだから……。
考え事を紛らわすように、メイはベッド に横たわった。
それでも、脳の働きは止まりそうにな い。
長すぎる片道の旅。 保との再会。
今日は、普段にない疲労感を覚えたので ゆっくり休みたい気分だが、頭が冴えて 眠れそうにない。
メイにとって何より衝撃的だったのは、 自分に血のつながった兄弟がいたこと。
母親は違うけれど、同じ父親の血を受け 継いだ幼い少年が、この地に生きてい る……。
妙な気分だった。


