幸せまでの距離


リクと別れて自分の客室に入ったメイ は、落ち着かない気分で部屋の中をうろ ついた。

以前はよくメグルの家に泊まっていた が、最近ではそういうことも少ない。

先日カナデの家に泊まったのを除き、外 泊したのはいつぶりのことだろうか。

穂積の姓を名乗っていた頃、翔子の暴言 から逃げたくて、しょっちゅう外を出歩 いた。

制服姿のまま夜の街を歩き、世の中の汚 いものをさらうかのように、周囲に視線 をさ迷わせていた。

“ミズキを脅迫して、その金でラブホに 泊まったこともあったっけ……”

生活感のないホテルの一室にいると、メ イはそんなことを考えずにはいられな かった。

ミズキの妹になってからも、寝付きの悪 さは治らなかった。

悪夢にうなされるのが怖く、ベッドに横 たわったまま何時間も眠れない、なんて いうことはざらにあった。

星崎家の養子になって以来、ようやく一 人で眠れるようになったと思ったが、今 になってそれは少し違うのだと気付い た。

他でもない、子猫達のおかげ。

今夜、メイは久しぶりに一人で眠らなけ ればならない。

子猫の柔らかいぬくもりに頼ることはで きない。