幸せまでの距離


“人って、悲しい生き物でもあるし、尊 い命でもあるな……。

愛と憎しみ。 好きと嫌い。 理性と欲望。

いつも真逆の思考に揺り動かされて、不 安定で、どちらか一方に定まることがな い。

結局は、感情で全ての評価を下しちゃう ところがあって。


ショウマは、こう言ってた。

人は、感情のバランスを取りながら生き てる、それが自然なことなんだって。

でも、安定したバランスを取れる人って いるのかな?

どちらかに偏って、正しい在り方を見失 うし、なかなかうまくいかない。

そもそも、『正しい在り方』なんて、無 いのかも。


法律だって、あってないようなものじゃ ん……。

隠された罪は、きっと多い……”

リクは、連休明けに提出することになっ ているゼミのレポートのことを思い出し た。

《法律と人》というテーマで、簡単な作 文を作るよう言われている。

“メイのように、陰で泣いている被害者 は多い。

一方で、俺やミズキちゃんみたいに、身 内的な感情が、リョウ君を追い詰めたメ イをかばったりもする”

――法律と人――。

考えれば考えるほど、様々な答えが絡ま りあい、思考の迷路に迷い込む。