幸せまでの距離


ベッドで寝返りを打ち、リクは壁を見つ めた。

壁で隔てた向こう側に、メイがいる。


犯罪と人について、彼は考えた。

“最初から悪い人なんていない。

犯罪者はそれだけで差別されがちだけ ど、元々は普通の生活を送ってきた人 で、特別な人間でもなんでもないんだ。

長い人生の中で、少しずつ道を外れてし まっただけかもしれないんだ。

『犯罪は悪いこと』って、誰もが分かっ てるんだから。

中には、身勝手な犯罪者だっているかも しれないけど……。

大抵の場合、普通の人が、なにげない日 常生活の中で罪を犯すんだ”

メイが星崎リョウを追い詰めてしまった 時のように、何らかの感情を抱いている 人間らしい人間が、ふとした拍子に罪を 犯してしまうのかもしれない。

“保さんも、そうだったのかな……?”

リクも、保の涙を信じてはいないし、彼 の罪を許す気はない。

後々泣くくらいなら最初からするな。そ う言いたいくらいだ。

けれども、メイを愛していると言い切っ た保の声が人間的な生々しさににじんで いたのも本当で。