幸せまでの距離


保はポケットの中から、手のひらに収ま る小さな木箱を取り出した。

「言い訳をさせてくれないか?」

そう言い、木箱を開け、中身をメイに見 せた。

「それは……!」

メイのそばで、リクが目を見開く。

綿に包まれて保護された黒い塊。

メイの臍(へそ)の緒だった。

「翔子と離婚した時から、大切に持って たんだ。

メイは、間違いなく望まれて生まれてき た子だよ。

出産を終えた後、翔子も笑ってた。

メイと過ごした毎日を、一日も忘れたこ とはない。

今でも愛してる……」

こらえられないのか、保は涙をこぼし、 現在の結婚生活に至る経緯を話した。


翔子と保が離婚した理由。

先日翔子がリクに話していた通り、それ は保の両親も知ることとなった。

保がしていたことに不安を覚えた彼の両 親は、保に見合いをさせたのである。

離婚により、結婚への夢や憧れを失った 保は、再婚する気になどなれなかった が、メイのことで、両親に責められる毎 日は苦痛でもあった。

両親への謝罪や反省を示すため……と見 せかけて、保は苦しい日々から逃げるた めに再婚した。

言う通りに見合い相手と結婚すれば両親 を安心させられるし、離婚の件について 何も言われなくなるだろう、と。