幸せまでの距離


父親に甘える少女の面影は、もう、ここ にはない。

メイは静かな瞳で保を見つめた。

感情のない彼女の目は、保から見ると、 冷ややかにも見えたし暖かくもあった。

両手で力いっぱい彼女を抱きしめたくな る。

保はその衝動を抑え、考えた。

一般的な18、19の女性にはない影 が、メイにはある。

本当なら、自分が翔子の虐待から彼女を 守らなければならなかった。

子供のうちに、世の中の綺麗な部分を見 せてあげるべきだった。

そうすればメイは、今日、こんな表情で ここに訪れることはなかったかもしれな い。

守るどころか、傷つけるだけに終わった 親子関係。

実の娘をこんな表情にさせたのは、自 分……。


黙ったまま、メイは保を見ていた。

にらむでもなく、罵(ののし)るわけで もなく。

目の前の男に言いたいことは山ほどあっ たはずなのだが、言いたいことが多過ぎ て言葉にならない。

また、言ったところでどうにもならない だろう、と、自己完結している。

それはマイナスの意味ではない。極めて 前向きな思考だった。