メイ自身も、今さら自分のしたことに驚き入っていた。
以前の自分だったら、翔子との関係を他人にだけは知られたくないと思っていたのに。
――『同情されるなんてまっぴらだ』
『不幸な人間だと思われたくない』――
だが、トウマという名の男を支えるカナデに、不覚にも心を揺さぶられてしまったのだ。
トウマやカナデのことは深く知らないし興味も持てないが、好きな男の夢を応援すると言い切ったカナデに衝撃を受けたのは確実で。
そうやって誰かのために動きたいと考えたことがない今までの自分を恥ずかしく感じた。
常に自分のことだけで精一杯だったメイにも、変わるチャンスが来ているのかもしれない。
自分が自分であるために、翔子との関係をありのまま受け入れる覚悟ができた。
今までは自分の生い立ちに目をそらし、目の前の不都合な出来事に「うざい」「めんどくさい」と返してきたが、それで現実が好転したためしがない。
カナデに対しても「本音をさらす」なんてベタな青春ドラマのようなことはしたくなかったが、そんな妙なプライドとは裏腹に、メイの心は理想を追いかけたくなっていた。


