幸せまでの距離




リクと離れて、一人駅前にやってきたメ イは、ベンチに座り、夜に近付く空を見 上げ、思った。

生きていくのが怖い、と。

それはなぜだろう。

答えは簡単だった。

自分を含め、「人の心は変わりやすいか ら」である。

常に同じ状態のまま保たれることなど、 世の中にはひとつとしてない。

状況が変われば立場も変わるし、人の心 境も絶え間無く変化する。


ある場面では「これが正しい」というこ とも、別の場面では間違っていたりす る。


もう、他人を傷つけたり踏み付けるよう な生き方はしない。

そう決めたはずなのに、メイの気持ちは またもや揺れ動いていた。

数年ぶりに再会する保に対し、どうしよ うもないほど憎悪が湧いてくる。

バッグの中で護身用のナイフをにぎりし め、考えた。

殺すべきか、やめるべきか。

“誰を殺す……?

自分?

それとも、保?”