幸せまでの距離


四つ折りになったそれを受けとったカナデは、手首のアクセサリーをシャラシャラ鳴らし、意外にも雑な手つきで紙を広げる。

「……穂積、メイ……!!」

メイの出生と現在の名字を知って驚いたカナデは、紙面に記される曲げようのない事実とメイの横顔を交互に見た。

メイの境遇を複雑なものだと想像したカナデは、絶句してしまった。

予想通りなカナデの反応を半身だけで感じ取りながら、メイは壇上を見上げる。

校長らしき初老男性が、壇上の机に設置されたマイクに向かって入学式に似つかわしい言葉を放っていく。

メイとカナデが先の見えない会話をしている間も、周囲は滞(とどこお)ることなく動いていたようだ。

二人の間に流れる微妙な空気をそのままに、他校と何ら変わりないだろうと思われる平凡な入学式は進行していった。


入学式が終わると、各自指定された教室に向かい、持参している住民票や戸籍と引き換えに学生証を受け取らねばならない。

菜月にはもう少し待っててもらわないといけない。

メイがパンフレットに記載された自分の名前を見つけ、目指すべき教室の番号を確かめていると、

「私もメイちゃんと同じ教室だよ。一緒にいこ」

カナデが声をかけてきた。