本日、学生証と引き換えるために持参した戸籍を証明する紙と住民票。
メイは隣にいるカナデに、それらを見せようと決意した。
“私が翔子の実の娘だったら何だって言うの?
そんなものに縛られて、たまるかっての。
私はあの女の存在にいつまでもいつまでも縛られていたくないんだ……!”
翔子と生きた過去を隠すということは、今の自分を否定することと同じ……。
そう考えたメイは、汗が出る緊迫した手のひらで、バッグの中の書類を手にする。
それを遮(さえぎ)るようにカナデがつぶやいた。
「穂積翔子、いまは何やってるんだろ……。
演技うまいって評判良かったらしいじゃん、なのに何で辞めちゃったんだろ……。
私、悔しいんだ。
トウマは夢のために毎日努力してる。
トウマだけじゃなくて、そういう夢を追ってる人はみんな必死なんだよ。
それでも叶えられない人の方が多い。
穂積翔子も夢を叶えるまではトウマと同じ気持ちだったはずなのに、どうしてアッサリ、それを捨てられたのかなって、さ。
女にとっては妊娠って大きな問題かもしんないよ?
それこそ人生を変えるような出来事でもある。
でも、それで夢をないがしろにした穂積翔子には、納得できないんだ……。
トウマを見て過ごしてるから、こんな風になっちゃうのかな。私も穂積翔子と同じ女なのに。ははは……」
「…………あんたは間違ってない」
メイはカナデの言葉をじっくり飲み込んだ後、前を向いたまま自分の出生を記す書類をカナデに渡した。


