幸せまでの距離


図星なのか。

それとも反論の言葉を考えているのだろ うか。

カナデはとたんに黙り込んだ。

「昔から変な大人に囲まれててね、私も 特異な人間になった。

たいていのことは無視できるけど、生理 的に受け付けられないタイプはいる。

金のために他人を利用する人間。

性的感情が崩壊してる人間。

特に金に汚いヤツは、そいつの顔にツバ 吐いてやりたいくらい、ウンザリするん だよ」

メイは言った。

「アンタはどれにもあてはまらない。

自分で考えて行動して、トウマの夢を応 援してた。

結果がどんな風でも、関係ない。

自分を信じて行動する過程に価値がある んだよ。

私にはそういう感情欠けてるから、素直 なアンタがうらやましかったし、一緒に いて学ぶことがたくさんあった。

トウマといるアンタには、なぜか惹かれ るものがあった」

「メイちゃん……」

柔らかくなったカナデの視線を突っぱね るように、メイはそっけない言い方で、

「……こんなこと言いたくないけど、一 度だけ言う。

本音でぶつかってきてくれて、嬉しかっ たんだよ。

そんな女、滅多にいない。


ウソや計算がまるでない、誰かのために 自分を犠牲にできる人間。

心から他人を愛せる人間。

アンタみたいな人は、苦しくても生き て、世の中の役に立つべきだろ。

少なくとも、私以上に他人から必要とさ れるに違いない」