興味本位な目でメイとカナデを見やる生徒達。
しばらくするとざわつく人々の声をくぐって、菜月がメイの元に駆け寄ってきた。
「メイ、どうしたの?」
保護者席にいた菜月の元にも、カナデの怒気を含んだ声が届いていた。
興奮気味だったカナデも、菜月を目にして我にかえり、
「すみません、心配かけて……。
ごめんね」
と、メイと菜月に交互に謝り、迷子の子猫のように頼りない面持ちでイスに落ち着いた。
しばらく二人の様子を見守っていた菜月も、入学式が始まるという校内アナウンスに従い、メイの方に振り返りつつ保護者席に戻っていった。
カナデに謝られても気分の悪さがおさまらなかったメイも、菜月のあたたかい眼差しを受けて自分の内面が強くなるのを感じた。
“私は、もう1人じゃない……よね?”
星崎菜月。養子縁組によってメイの母親となった女性。
彼女はメイのことを、彼女の実の娘·ミズキと同じように愛してくれる。
メイの穂積翔子に対するわだかまりは一日やそこらで消えるほど簡単なものではないけれど、メイには星崎家の人々が守ってくれた未来がある。


