メグルに電話をしたのはいいが、その後 どうしたらいいのか、メイには分からな かった。
冷静になって考えてみれば、メグルには 何も伝えない方が良かったのかもしれな い。
メグルのことだ。
カナデが病院に運ばれたと知れば、何が 何でも駆け付けてくるに違いない。
実際、メグルは店長に事情を話し、連休 中で忙しい時間帯だというのに仕事を抜 け出してきた。
「メイ…! カナデちゃんは?」
誰が見ても居酒屋の店員だと分かる格好 のまま、メグルは病院の出入口に走って きた。
メグルもメイと同じで、運動はあまり好 きではない。
なのに、走ってきた。
「今、病室で寝てる」
メイは言い、メグルを案内した。
リクは黙って、二人の後ろを歩く。
メイにとって、カナデがただの友達では ないことに、リクは気付いた。
本人は、そう口にしようとしないけれ ど……。
病室の前に着いた時、メグルはためらい がちに言った。
「カナデちゃんは、あたしより先にメイ に会いたいと思ってるかもしれないよ。
だから、メイが先に行ってあげて?
あたしは後で行く、絶対」
「……わかった」
メグルとリクを通路に残し、メイはカナ デの病室に入っていった。
スライド式の白い扉が、やけに重く感じ られる。


