メイは市内の総合病院のロビーにいた。
そばにはリクもいる。
ケータイを使用しても良いスペースに行 き、メグルに電話をかけた。
無意識のうちに、メグルの顔が浮かんだ のである。
「カナデ、手首切って、病院に運ばれ た」
それだけ告げる。
『カナデちゃんが?
いますぐ行く…! どこの病院?』
今頃仕事中なのだろうが、メグルは当然 のようにそう言い、電話を切った。
前から彼女は、カナデのことを気にして いたフシがある。
トウマのアパートで自殺をはかったカナ デ。
彼女を見つけた時、リクがすぐさま救急 車を呼んだ。
幸い、通報が早かったおかげでカナデの 命は助かったが、もう少し発見が遅れて いたら危ない状態だったと医師が言って いた。
彼女は今日からしばらく入院することに なり、今は、個室部屋で眠っている。
「メイ、大丈夫?」
リクはメイを気遣い、彼女をロビーのイ スに座らせた。
入院患者や見舞いの人々でざわついてい る。
メイは、カナデを発見した瞬間の衝撃が 忘れられなかった。
「ある程度のことには、免疫あるつもり だったのにね」
無理に、そうつぶやく。
浴室でカナデを見つけた瞬間、メイは 思った。
どんなに前向きな人でも、瞬間的に死を 選び、生きる力を失うのかもしれない、 と。
特に、生きがいを失った人間は……。


