トウマが《1002》から出てきたの は、15時を少し過ぎた頃。
女性はまだ中にいるのか、出てきたのは トウマ一人だけだった。
「うわっ……!」
扉を開けた瞬間、トウマは驚いて声を上 げた。
カナデがここにいることが、意外だった らしい。
カナデはうつむいたまま、
「劇団の人が、親切に教えてくれた。
トウマが、ここのカフェでCMの関係者 と会ってるって」
「あいつ、しゃべったのか……。
CMのことは関係者以外には絶対言う なって口止めされてるのに…!」
トウマは片手で髪を乱し、苛立ちをあら わにした。
「私、他の人に言わないよ」
「そういう問題じゃない……!
何でカナデが、こんなとこにいるんだ よ!」
「トウマこそ、何でこんなとこにいる の?
しかも、女と。
3時間も、こんなとこで何してたの?
あれから全然、連絡くれないし……」
「ちょっと、ここじゃまずい……!」
室内にいる女性に聞かれたくないのか、 トウマはカナデの腕を引きエレベーター に乗ると、1階を目指した。
誰もいないエレベーターの中、カナデは たしかに、トウマから知らない匂いを感 じ取った。
《1002》の中で、彼はシャワーを浴 びたのだろう。
「あの女、本当に仕事の関係者なの?」
「うるさいなぁ……!
何でお前に、そこまで口出されなきゃい けない?
うんざりなんだよ」
エレベーターが下降する音に、トウマの 本音が重なった。
カナデは、何を言われたのかすぐには理 解できず、
「うんざりって……?」
震える声で聞き返す。


