劇団員の言っていた通りCM関係の話を するのなら、これから、関係者の集まる 事務所に行くのかもしれない。
あの女性は、若いけど偉い人なのかもし れない。
あるいは、トウマのマネージャーになる 女性かもしれない。
いろいろ想像しながら、カナデは到着先 でエレベーターを降りた。
10階。
トウマと女性は、エレベーターからもっ とも近い部屋に入っていった。
気付かれないよう、カナデは足音を立て ず慎重に歩き、二人が入っていった扉の 前に立った。
1階のフロアと変わらない雰囲気。
外にいても、室内にいるような新築独特 のにおいがする。
《1002》
部屋番号の書かれた扉。
表札には名前の表示もなく、誰が住んで いる部屋なのか分からない。
「事務所とかじゃなさそう……。
こんなとこで、何してんの……?」
カナデは思わずドアノブを引いてしまっ たが、当然、鍵がかかっていて中には入 れなかった。
ここは、あの女性の部屋なのだろうか?
それから3時間。
カナデは扉の前で直立したままトウマが 出てくるのを待ったが、出てくる気配は なかった。


