“仕事の話なんて、全然してない し……!”
カナデは怒りを抑え、全神経を耳に集中 させる。
店員が注文を聞きに来たので、適当な物 を頼むと、再びトウマ達の会話を聞い た。
「トウマ君なら、すぐ有名になれるわ よ。
私が保証する。
今まで目立たなかったのが、信じられな いくらいだもん」
「ありがとうございます。
時間がかかりましたけど、おかげ様で、 長年の夢が叶います」
終始、トウマは女性に気を遣っている。
カナデからしたら、それはデレデレして いるようにも見えて、不愉快だった。
“トウマの夢を、誰よりも応援していた のは私なのに……。
何であの女が、トウマの才能分かって る、みたいなこと言うわけ!?”
「じゃあ、行きましょう」
女性は席を立ち、トウマをうながすとカ フェを出ていった。
カナデもあわててレジで料金を払い、お つりも受け取らず急ぎ足で二人を追いか ける。
二人が別れたら、トウマと話がしたい。
けれど、トウマと女性は別れる気配がな く、それどころか、マンション内のエレ ベーター前に並んで立った。
3つあるエレベーターのうち、真ん中の それに、二人は乗った。
“何で……?
まだ、仕事の話があるの?”
死角に隠れつつ二人の様子を見ていたカ ナデ。
二人の姿がエレベーターの中に消えたの を見計らい、彼らが目指した階数を見 た。
「10階……」
カナデもすぐさま違うエレベーターに乗 り、10階を目指す。


