劇団の事務室。
出入口に着くなり、カナデは中にいた一 人の男性にトウマの行方を尋ねた。
幸い、相手はトウマの同期生で、簡単に 彼の居場所を教えてくれた。
「トウマなら、今ごろCMの関係者と 会ってるよ。
雑用係のオレとはえらい大違いだよ。
うらやましいぜ」
「……CM!?」
カナデは驚かずにいられなかった。
そんな話、トウマからは聞いていない。
どうやら、関係者にしか知らされていな い話だそうだ。
「ああ、友達なら知らなくて当然さ。
トウマね、某大手ビールメーカーのCM に起用されることになったんだよ。
新作のイメージに合うんだって。
ずっと目立たなかったクセにな?
裏で、なんかヤバイことしてんじゃねえ かな。
あ、このこと、他の人には内緒ね?」
「はい……。ありがとうございます」
彼はトウマの活躍に嫉妬して口を滑らせ たのだ、と、カナデは察した。
今まで、夢追い人止まりだったトウマ。
それが、急に注目されだして、CM出演 まで決まった。
面白く思っていない同期生は多いのだろ う。
トウマだけでなく、舞台俳優を目指す人 間の多くは、才能を認められないまま、 有名人の影に埋もれてしまう。
トウマも、少し前まではそうだった。
同期生からもらった名刺を頼りに、カナ デは市内のマンションに向かった。
そこの一階にあるカフェで、トウマはC Mの関係者と打ち合わせをしているそう だ。
行くと、たしかにトウマの姿があった。
広い店内。
彼は、カナデの来店に気付くことなく、 関係者らしき女性と楽しげに話をしてい る。
明らかに、雰囲気がおかしいとカナデは 思った。
仕事の打ち合わせをしているという位だ から、てっきりビジネスの話をしている のかと思ったら、たわいない世間話をし て微笑みあっている。
トウマの視界に入らないよう、カナデは 彼らのそばに席を取り、聞き耳を立て た。
恋人同士のような会話をしている男女二 人に、カナデの全身は熱くなる。


