正面にいる今井と樋口を交互に見た後、 マユミは夫の目を見て言った。
「あの時からずっと、智弘のそういう視 線がつらかった。
遠慮してるような、同情してるような。
私と一緒にいることに、引け目を感じて ほしくない」
マユミはお腹をなでる。
「私達、約束したよね。
自分達の罪を忘れないために、結婚して も子供は作らないって。
でも、それに対して、後悔してる部分も あるんだ」
「え……?」
「だって、私達は、命の大切さを身を もって体験した。
智弘は、本来なら浮気するような不誠実 な人じゃない。
それなのにそういう行動に出てしまうく らい、追い詰められた。
そんな私達だからこそ、次に授かった子 を大切に育てられるんじゃないかって思 うの。
もちろん、赤ちゃんの命を自分達の都合 で消した事実は、無くならない……。
だからこそ、自分達の子供にはそういう 思いをさせないよう、親として、気を配 ることができるはずだよ。
虐待や、性交渉低年齢化に関するニュー スを見て、智弘はこう言ってたよね?
俺達に子供がいたら、こんな思いはさせ ないのに。親の愛が正しく注がれてないから、こん な悲しいことばかり起きるんじゃない か、って。
……それ聞いた時、智弘と結婚して本当 に良かったと思った。
つらいことはたくさんあった。
今でも、お互いの両親から私達の結婚生 活を良く思われてないって感じるたび涙 が出るけど、私達はそれだけのことをし たんだって、忘れずにいられる。
幸せになろうよ。今度こそ」


