幸せまでの距離


「……うん」

うなずくメイのわだかまりが、ひとつ解 消された。

過去の罪に苦しみながら、それでも、自 分を大切にして生きていく。

今までは、自分の存在が後ろめたく、前 向きに考えられない面もあったが、これ からはそういったマイナスの想いを、原 動力にできそうだ。

なぜなら、ミズキが全て受け止め、否定 せずにいてくれたから。

メイがメイであることを、認めてくれた から。


抱きしめていた体を離し、ミズキが言っ た。

「統計上の話だけど……。

心の問題を乗り越えた人がカウンセリン グの仕事に就くケースって、多いんだっ て」

「そうなの……?」

「うん。臨床心理士の7~8割が、元は 精神的な病を患っていた患者さんだっ た…って言われていた時もあるくらい。


大丈夫だよ。

人には、自分を癒す力がある。

今はその力が弱まっているだけで、メイ もきっと、乗り越えられるから」

「うん……!」


メイは、専門学校に入学した時の気持ち を思い返した。

あれからまだ1ヶ月も経っていないの に、初心がすでに懐かしい。


手に職をつけて、自分の作ったお菓子で 人を幸せにしたい。

夢を再確認する。


あとは、男性への恐怖心と不信感。

それを、無理なく克服する必要がある。

完全に警戒心を無くすことはできないけ れど、男性に対し強い偏見を持ったまま では、今後の生活に支障が出てしまう。


メイには分かっていた。

これから、自分がどうするべきか を……。


「……少しずつでも、リクと向き合える ようになりたい。

ずっと逃げてきたから」

メイがそう言い出すのを、ミズキは待っ ていた。

カウンセリングを受ける場合、本人に治 療したいという意思がないと、スムーズ にいかない。

強制はできない、デリケートな問題だか らだ。


この日メイは、一歩前に進んだ気がし た。

自分の内面を見つめることに成功したと もいえる。