幸せまでの距離


ミズキは、メイの肩に置いた手に力を入 れた。

「……守りたいものがたくさんあるの、 私には。


もちろん、過去を忘れたわけじゃない よ。

でも、そのために、自分の傷ばかり気に していられないのも、現実。

内面を見つめるのも大事なこと。

だけど、常に前を見ていないと、大切な ものを見失うと思った……。


メイから見て、今の私が強く映っている のなら、私はもっと強くなりたい。

メイの悲しみを理解するために、

将来、私のカウンセリングを頼りにして くれる相談者さんのために、

私は日々、自分を鍛えるつもりで生きて る。

精神的にブレない、成熟した人間になり たい。


イジメや差別、性犯罪に、殺人……。

毎日ニュースになるのに、ちっとも無く ならないよね。

いつになっても、悲しい事件は繰り返さ れる。

常識ではダメだと理解しながら、人は同 じようなあやまちを何度も犯す……。


人間特有の優越感と自我愛欲……。

家庭環境の中でそれが満たされなかった り、様々な理由で自我愛欲が強くなる と、人は他者をいじめて自分を上げるこ とで、優越感を得て、自我愛欲を満たそ うとする。

リョウのように、何の罪もない、普通に 生活してる子供が、簡単にイジメのター ゲットにされてしまう。

そんな社会は……イジメを見過ごす学校 は、間違ってる。

私のような想いをする人を、この国から 一人でも多く減らして、幸せな人の笑顔 が見たいんだ」

「そんなまわりくどい言い方しないで、 私を責めたら?

『お前のせいでリョウが亡くなった!』 くらい、言えば……?」

「メイ……」


赦(ゆる)された側の痛み。

メイの苦悩。

ミズキにも、それが伝わった。