幸せまでの距離


リクの言葉をシャットアウトするよう に、メイは玄関に駆け込んだ。

猫を抱きしめたまま、扉にもたれて座り 込む。

変わることのないリクのまっすぐな想い が、こわかった……。


しばらく放心状態でいると、物音に気付 いたミズキが、玄関までやってくる。

「メイ、おかえり。

その子は……!」

ミズキはメイに近付き、猫を見る。

「……樋口に殺された。

墓作ってあげなきゃならないけど、今夜 だけは、一緒にいたい」

「……そうだね」

こんなことになってしまった悲しさ。

樋口への失望感と怒り。

ミズキは様々な想いを胸にしつつも、メ イをゆっくり立たせ、リビングに連れて いった。


奥に居た菜月は、静かにメイを出迎え、

「おかえりなさい。

その子を、安心できる所に寝かせてあげ ましょう」

メイは小さくうなずいた。

猫用ベッドを、リビングの窓際に置い た。

人間から見たら座椅子にもならない、パ イル地クッション感触の上に、親猫を寝 かせる。

これは、先日カナデに譲ってもらった 物。

自分達も猫用品を買ったから、もらい物 はしばらく使わないと思っていたのに、 こんなにも早く、使う機会は訪れた。


親猫もといシェルは、生前、よくこの窓 辺に来て、メイを探しているようだっ た。

樋口への怒り以上に、メイの頬には悲し みの涙が込み上げる。

彼女の背後では、ミズキと菜月が、見守 るようにシェルとメイを見つめていた。