幸せまでの距離


「やっぱりアンタは、私を買いかぶり過 ぎてる」

頭に乗せられたリクの手。

それから逃げるようにメイは一歩後ろに 下がり、彼に背を向けた。

リクはなごりおしげに、手を引っ込め る。

「自分のトラウマを理由に、私はアンタ を殺した。

それも、一度や二度じゃない。

頭の中で、何回も何回も。

アンタの息の根が止まるまで」

「本当に……?」

メイは彼に振り返る。

「ウソだと思うなら、ナイフでも何でも いい、凶器になりそうな物持ってきて よ。

そしたら私は、アンタを傷つける。確実 に」

「メイはそんなことしないって信じて る……!

だって、そんなに過去を悔やんで苦しん でるじゃん!

それに、俺はメイのこと……」

「言うな!!」

叫び声が、床に落ちて割れたグラスのよ うに、近隣に広がる。

メイは彼をにらみつけ、手早く自宅玄関 の鍵を開けると、そのまま中に入り、勢 い良く扉を閉めた。