友達の作り方が分からなくても、環境を変えることで、メイはメイなりに前を向いて生きていく心持ちでいた。
星崎家の人々と出会うまでのメイの性格や生き方は、あの母親に左右されていたのも同然。
親子なのに愛に満ちる生活を送れなかったどころか、自分勝手な王様とそれにこき使われる奴隷のような主従関係でしかなかった忌(い)まわしい関係を断ち切っても、翔子との血のつながりはこうしてメイを苦しめる。
ただでさえメイの深層心理は過去に縛られ、水をはった洗面器に顔を突っ込まれたようにもがき続けている。
メイがリクとの関係をあいまいなまま保留しているのもそのせいだ。
……にも関わらず、翔子の存在はメイの気分などおかまいなしと言わんばかりに、メイの生活や新しい環境にまで姿をチラつかせる。
“あの人は、どこまで私の邪魔をするんだよ……”
体中を土砂に埋められてしまったように、メイの心は重たく憂鬱になった。


