幸せまでの距離


腹を満たすと眠たくなってきた。


数日、温かい湯に体を浸けていない。

風呂に入りたいが、浴室を使えば翔子に罵声を浴びせられるのは目に見えていたので、寒さを我慢し、台所で頭を洗う。

使うのは水とシャンプーのみ。

引っ越す前まで居た小学校で同級生たちに暴行を受け、長かった髪を肩ほどまで切ったばかりだったので、洗髪は楽だった。


かれこれ一週間ほど使い続けているタオルの三分の一ほどを濡らし、体を拭く。

これで入浴は終了。


引っ越したばかりで布団はなかった。

前の家にある物を持ってこれば良かったのかもしれないが、翔子がそれを嫌がったため、この家には必要最低限の半分ほども物がない。

メイはバスタオルを二枚用意し、自室にこもる。

一枚を畳の地面に敷き、もう一枚は掛け布団の代わりにした。


屋根や窓をしきりに揺らす強い風。

心細さと骨まで冷やしそうな寒さをごまかすように、メイは身を縮こまらせて眠りについた。