幸せまでの距離


「……器物損壊。

法律で考えたら、樋口さんの犯した罪は そんな短い名前になる。

でも、樋口さんのしたことは、短い罪名 では表現できないくらい大きなことだよ な。

その子の命を奪っただけじゃなく、メイ と今井さんのことも傷つけた……。

今井さんの奥さんだって、このことを 知ったら泣くと思う」

猫を殺したことで、樋口は多くの人に波 紋(はもん)を呼んだ。

「俺は、樋口さんがあのまま普通の生活 を送るなんて、信じられない。

今井さんなら、樋口さんを許してしまう と思う。

でも、罪を犯した人は、ちゃんと罪を償 うべきだと思う。

何年かかっても。

自分の生活を犠牲にしても」

罪を償う。

リクのセリフは、ここに居ないメイの父 親に向けて言ったものでもあった。

リクは、日毎に許せなくなっていたの だ。

幼いメイを追い詰め、物のように扱い、 今も彼女を苦しめ続けている性犯罪者 を……。

どのような話をしていても、最終的には そこに結びつけてしまう。


『メイの父親』として偏見なく見たい し、父親が、『父としてメイを愛した 証』を見つけたいと、本気で思ってい る。

一方、メイの父親が自分の罪から逃げた ことを許せないという想いも、リクの中 にあった。