すぐに戻ってきたリクの片手には、小さ いビニール袋が揺れている。
“前にも、こんなことがあったな……”
回想に、リクは胸が痛んだ。
メイが実の母に、熱湯でヤケドを負わさ れた去年。
今のようにメイを手当てするべく、リク は薬局まで走り、必要な物を見て回っ た。
あの頃は、メイを母親の暴行からかばう ことに必死で、メイの内面が抱えるもの を理解しきれていなかった……。
「いいって、こんな傷、放っておけばす ぐに治る」
「ダメだって!
ばい菌入ったらヒドいことになるぞ!?
お菓子作り出来なくなってもいいの?」
「……っ」
リクは、手当てを拒むメイを強引に説得 し、再び猫を預かると、彼女の片手を引 いた。
にぎやかな喧騒がビル越しに聞こえる。
暗がりに位置する歩道橋の階段にメイを 座らせると、リクも隣に座り、彼女の指 先に、買ったばかりの消毒液を塗り始め た。
局所的にピリッと走る痛みに耐え、メイ は歯を食いしばる。
「やっぱり、水道水だけじゃ心配だし な」
リクは言い、消毒を終えた傷口すべて に、丁寧な手つきで絆創膏(ばんそうこ う)を貼っていった。
それは、某メーカーが発売している、自 然治癒力に頼って傷を治す、はがれにく い密着パット式のものだった。
これをしていれば、日常生活で水やホコ リに触れても傷が痛まない。
子供だけでなく、大人にも嬉しい商品で ある。


