「……」
リクの話を胸に浸透させるべく、メイは しばし黙り込んでいた。
以前なら、リクの言葉が何もかも綺麗事 に思え、メイは聞く耳を持てなかった が、この瞬間は違った。
“リクは「全部」知ってる。
その上で、私の立場になって考えようと してくれてる……”
実の父親に性的虐待を受けたことによ り、男性への嫌悪感が取れないこと。
リクが、何らかの形でそれを知ったとい うことが、メイにも分かった。
翔子だけではなく、メグルとミズキも 知っている事実なので、あの二人がリク にそのことを話していたとしても不思議 ではない。
そうだとしても、彼女達を責める気はな い。
“自ら話したのは、私だ”
決して自分からリクに話す気などなかっ たし、知られて動揺したのも確かだが、 知らないままでいられるより、ずっと気 が楽だった。
どういう経験を経て、今の自分になった のか。
それを理解してもらえただけで、メイは リクに対する後ろ暗さが軽くなったの だ。
被害にあったのは、決して自分のせいで はない。
分かってはいても、そんな自分を受け入 れられず苦しかったのも本当だった。
リクに被害のことを知られたら、嫌われ るのではないだろうか……。
あるいは、よりいっそう性的な関心を持 たれ、『もう男を知っているのだ』とい う視線を向けられ、道具のように扱われ るのではないか……。
態度には出さないようにしていたが、そ ういった不安や疑いから、メイは常に、 自分自身を底辺の人間と見て、リクにも 壁を作って生きてきた。
そうすることで、何か悪いことが起きて も必要以上に絶望しなくて済むし、落ち 込む自分に言い訳ができるから。
また、自分自身が弱い心を持った人間な のだと思いたくなかった。


