幸せまでの距離


「このままじゃ、メイがやりきれないだ ろ……?」

リクはまっすぐメイを見た。

「こんなままじゃ、悔しいじゃん……!

身勝手な大人達に振り回されてさ。

本当なら、メイだって、メグルちゃんや ミズキちゃんみたいに、日常に愛情を持 てるような生活を送っていたはずなん だ。

それなのに、歪んだ大人のせいで、幼い 頃から子供らしいことなんて何一つでき なくて、子供なら当然の感情を出すこと すら、許されなかった。

家にしか居場所がないのに、家にも学校 にも、心のよりどころがなくて……!


『だったら、私は何のために生まれた の?』

メイがそう考えてしまうのも、無理ない んだ。

親の愛情を感じられなかったり、自分を 否定してしまう生き方は、メイに責任が あるわけじゃない。


そういうことを、おじさんと話したいん だ」


……メイは考えた。

リクは、興味本意で動いているわけでは なさそうだ。

メイの父に会うのは、あくまでメイのた め……。

それに、メイは今、内に込めた感情をリ クに代弁してもらえた気がした。

何かと言えば前向きなことしか言わな かったリクが、今ではメイの感情を理解 し、考え、的確に察し始めている。


「俺は絶対、あんな大人にはならない。

この先、嫌いな大人を手本にしたりはし ない」

リクは、メイの腕に抱かれた猫を見つめ た。

「傷ついた分、メイは人の優しさを感じ てきたはずだ……!

メイを思いやる人の存在が、大きく見え たと思う。


俺もそうなんだ。

メイを傷つける大人を見て、理不尽な世 の中に腹が立って、どこにこの怒りをぶ つければいいのか、全く分からなかっ た。

でも、それは間違ってた。

外にぶつけるんじゃない。

自分の中で、消化しながら生きていけば いい。

人間は馬鹿だから、悲しい思いや痛い経 験をしなきゃ分からないこともたくさん ある。

そういう意味では、メイと別れてよかっ たと思う。

汚い大人を見てきて、よかったと思う」