幸せまでの距離


メイの気持ちが、リクには痛いほど伝 わっていた。

「その痛み、半減させてあげたい……」

「…………無理だよ。

アンタと私は違う人間なんだから、どん なに努力したって、理解しあえるわけが ない」

猫を抱きしめ言い切るメイに、リクは 言った。

「うん。本当に、その通りだよな。

他人を理解するのって、口で言うほど簡 単じゃない。

でもさ……。目に見えないけど、メイの 感情は伝わってくるよ。

だから、何もできなくて悔しいし、俺は そばにいることしかできないんだと思 う」

「…………」

「できることなら、成り代わってあげた い。

メイの受けた傷とか、忘れたい過去も、 全部、なにもかも、俺の経験にすり替え たい……。

それが無理なら、俺は、メイが死のうと するたび、それをとめる。

メイにとってはウザいだけかもしれない けど。

結局俺は、メイに生きててほしいだけな んだ。

それに、たとえ樋口を殺したとしても、 メイが満たされるとは思えない」

リクは自分の経験を思い出しつつ、こう 続けた。

「宇都宮を殴った時、俺はちっとも満足 できなかった」

“メイを利用しようとしたあの人が大嫌 いで、正直「死ねばいい」と思った”

「一発殴れば気が済むはずだったのに、 スッとしたのはその瞬間だけで、あの人 への怒りは募るだけだった」

リクの言い分もわかる。

だが、メイの気持ちは限界だった。

「……キリがない。

憎しみとか恨みとか、悲しみとか、ただ 生きてるだけで、いくつもの感情を抱え なきゃならない。

息をするのも苦しいよ……」

「メイ……」

「強くなりたい。

何にも負けない自分でいたい。

そう思ったって、すぐ、こういう現実に 砕かれる。


泣いたって、この子は生き返らな い……。

この涙すら無意味に感じる。

私にとって、この子はただひとつの希望 だったのに……。

もう、こんな思いしたくない……」

生きていたら、また、いつ、悲しい出来 事に直面するか分からない。

だったら、自分を苦しめる元凶を殺害 し、自分をもこの世から消失させる方が ずっといい。

メイはそう思った。