幸せまでの距離


メグルみたいに、自分をさらけ出して明るい態度で接するような子は、たいがい誰にでも好かれる。

そのはずなのに、同じことをメイがやっても、駄目だった。小学生の時の苦い思い出……。


“メグルはメグルだから、好かれるんだよね”

そう思うと、メイの気分はよけいにふさいだ。

優しく、明るく、元気よくをモットーに暮らせば良いのだと分かっていても、メイの心情的に、どうしてもそれができそうにない。できる気がしない。

「やる前から諦めるな」という言葉があるが、諦めたくもなる。

“友達作るなんて……。夢のまた夢……”

ため息をついてパンフレットのページを意味なくめくった。

“私とメグルでは根本的に違いすぎるんだ。何もかも……”

ここから逃げ出したい気分を消し去ったのは、突然メイの横に現れた人影だった。

「穂積翔子にそっくりだね!」

キャラキャラした口調で声をかけてきたのは、入学式に参加するのだろうと思われる1人の女子だった。

スーツを自分流に着崩して、手首や首をネックレスなどの装飾品でキラキラさせている。

彼女が隣のイスに座った時、メイの鼻に果実を連想させる甘い香りが漂ってきた。