遠く離れつつあるメイを見つめ、リクは 考えた。
“どう考えても樋口さんの方が問題ある のに、どうして今井さんは、あそこまで 樋口さんの肩を持つんだろう?”
その答えは、すぐに出た。
“俺とメイの関係と同じだ……。
何があっても、今井さんは樋口さんのこ とが好きなんだ”
どんな形であれ、長年付き合ってこれた のは、相手の存在が自分にとって心地良 いから――。
リクがメイに好意を持ち続けたように、 今井もまた、樋口を見捨てることができ なかったのだろう。
リクはそんな解釈をした。
交差点の信号にさしかかった頃、メイは ようやく足を止め、リクもそれに追いつ いた。
メイは信号無視して先に進みたかったの だが、車の通りが多く、無理だった。
午後の日差しとメイの体温で、彼女の腕 に抱かれた親猫の体は乾きつつある。
それを見て、リクは言った。
「……子猫達は、絶対に守ろう」
「……」
メイは黙ったままだった。
そのうち信号は変わり、メイはリクを振 り切るように早足で前に進んだ。
無言のまま、リクはメイについていく。
途中、道行く人々は、不思議そうな顔で メイを振り返った。
動物の亡(な)き骸(がら)を抱いた彼 女の姿が珍しかったのだろう。
メイはリクの存在すら目に入っていない ように、好奇に満ちた他人の視線も気に せず歩き続けた。
二人は長い時間をかけて歩き、メイが足 を止める頃には日が落ちていた。
だどりついたのは、幼稚園時代、二人が よく遊んだ河川敷だった。
幼かった時代に、物珍しい植物を摘 (つ)んだり、散歩中の犬を眺めて楽し んでいた場所である。
外灯の白い光が、川沿いに広がる草原に 反射し、葉の先端をまばらに照らしてい る。
「ここにお墓を作るの?」
リクが尋ねるとメイはうなずき、橋の 下、草のない地面に移動し、無言で土を 掘った。
リクも無言で、それを手伝う。


