変わり果てた姿。
今井はすぐさま浴槽に手を伸ばし、そっ とシェルを抱き上げたが、もう、息はし ていなかった。
「シェル……。ごめん……」
今井の両目には、涙が浮かんでいた。
シェルの両手両足は複数の輪ゴムで縛ら れていたので、今井はそれを丁寧な手つ きで取り去った。
言葉が出ないまま、リクはそれを手伝 う。
「ひどいよ、こんなの……」
無言で涙する今井の横で、リクも目を潤 ませた。
やっと見つけることが出来たのに、助け てあげられなかった。
「昨日までは、あたたかかったの に……」
濡れたシェルを腕に抱く今井の声は、震 えていた。
1階の部屋は全て探し終えた。
他に探す場所が思いつかなかったメイ は、声のする方に足を向けた。
さきほどまでシンとしていた脱衣所の扉 は開いていて、中から人の気配が漂って いる。
「……」
脱衣所に入った瞬間、浴室の床で座り込 むリクと今井の背中がメイの視界に飛び 込んできた。
今井の肩は震えている……。
「見つかったの……!?」
メイが二人の方に近寄ろうとすると、リ クは素早く立ち上がり、彼女が浴室に立 ち入るのを防ごうとしたが、メイは力づ くでそれをすり抜け、今井を見下ろし た。
「……死んでるの?」
メイは崩れるように座り込み、事切れた 親猫の姿を凝視した。
今井の腕の中、親猫は眠っているように 動かない。
震える右手で猫の頭をなでると、背筋が 凍るほど冷たく感じた。
メイの指先には、水に濡れた毛先の感触 が強烈に残る。
彼女は期待していた。
樋口が危険な人間だと分かっていたけれ ど、心の隅で、親猫が無事でいてくれる ことを。
消えた命を目にしても、にわかには信じ られなかった。
どれだけ泣いたとしても、もう、元気 だった親猫は戻ってこない……。
泣く代わりに、メイの体は焼けるように 震えた。
助けられなかった後悔と、樋口への怒り で。


