幸せまでの距離


浴室の中は、整理が行き届いていた。

シャンプーやトリートメントは乱れなく 並べられているし、タイル製の床と真っ 白な壁には、カビひとつない。

日頃から、丁寧に掃除されていたのだろ う。

他の部屋と違い、綺麗すぎる生活感のな い浴室。

リクはそれを意外に思い、浴槽(よくそ う)に視線を落とした。

浴槽にはフタがしてあり、窓は開け放た れていた。


今井は小刻みに震える手を浴槽のフタに 置き、言った。

「樋口は昔、同級生のハムスターを盗ん で殺したことがあるんだ。

どうやって殺したのかは分からないけ ど、その時、この中に水を張って、ハム スターの死体を浮かせていた……。

土に埋めたのは、そのあとだった」

「……それじゃあ!」

「うん……」

リクは、ミズキからの電話連絡で樋口の 過去を知っていたので、今の話も比較的 冷静に聞くことができたが、これから起 こることを予知されたようで、鳥肌が立 ち、寒くなる。


「……開けるね」

今井がおもむろにフタを開けると、半分 ほど水の入った浴槽の中に、親猫・シェ ルが浮かんでいた――。