リクは、メイのいる反対の方角を探して いた。
散らかった室内は死角も多かったので、 部屋のわきに積まれた雑誌や、やけに重 い段ボール箱を移動させつつ探索をして いた。
「……いない」
あらゆる部屋を探し終え、焦る気持ちが ピークに達した頃、廊下に出たリクは足 元に見覚えのある物を見つけた。
先日、星崎家の前に落ちていた、色とり どりの輪ゴム……。
それは、リクの視界から線を描くような まばらな形で、廊下に落ちていた。
輪ゴムの落ちる先をたどっていくと浴室 と思われる扉の前に着いたので、リクは 思い切ってそこに足を踏み入れた。
まだ、ここは見ていなかった。
バスクリンの匂いが漂う脱衣所は、脱ぎ 捨てたままの作業着や汚れたタオルが散 らばっていて足の踏み場がないが、一般 的な内装で特に変わったところはない。
浴室のドアはしっかり閉められている。
脱衣所の脇には洗濯機と洗面台があり、 洗面台の上には、輪ゴムが山盛りに入っ たプラスチック製のコップが置かれてい た。
“これか……。
じゃあ、ミズキちゃんちの前に輪ゴムを 落としたのも、もしかして樋口さん?
そうだとしたら、何のために?”
これ以上探すアテがないと思い、リクが 引き返そうとした時、2階にいた今井が やってきた。
もしかして、2階で猫が見つかったのか もしれない。
リクは期待を込めて今井を見たが、
「上にはいなかったよ……」
今井は申し訳なさそうに首を振った。
「下にも、いないみたいだね」
「見てないのはここだけなんですけど、 さすがにこんなとこにはいないですよ ね……」
「……いや、一応見ておこう」
今井はやけに深刻な顔で、きっちり閉め られた浴室の扉を開けた。
内側と外側、両方から開閉できる鍵がか けられているのを見て、今井はここに親 猫がいることを確信した。
「……多分、ここにいる……!」
「えっ……」
リクは弾かれるように今井の横顔を見 た。


