幸せまでの距離


メイは、どうしたら人と仲良くなれるのかが分からなかった。

ミズキや菜月のように、向こうから近付いてきてくれるような心の広い人に出会いたいとすら願った。

自分から他人に近付く勇気は、砂糖1粒分ほども持ち合わせていない。

高校時代にずっとメイのことを気にかけてくれたメグルの、屈託(くったく)のない笑顔が脳裏に浮かぶ。

メイが専門学校へ行くと決めた時、メグルは嬉々とした表情で言った。

『メイ、いい夢見つけたね!

あたしもメイと一緒に、お菓子作りやりたいな』

だけど、メグルは祖父に養ってもらっている身。

祖父の滝川一郎(たきがわ·いちろう)には多少の遺産があるが、普段は少ない年金と貯金を切り崩して生活している。

穴があいた靴下をはいている一郎のことを考えると、メグルは進路のことで素直な希望を言えなかった。

『メイと離れるのは寂しい……。でも、卒業しても、メイとの関係は変わらないから!』

メグルは寂しそうに笑って、就職の道を取った。

高校卒業前までバイトさせてもらっていた居酒屋の店長に相談し、彼女はそこの社員となったのだ。

メイとリクが春休みを過ごしていた3月中も、メグルは毎日楽しそうに働いていた。