幸せまでの距離


ホコリっぽい階段をのぼり切り、今井は 物置部屋に入った。

しかし、昨日までそこにいたはずの親 猫・シェルの姿はない。

アンバランスに詰まれた家具や家電、不 要となった雑誌が積み重なっているだけ である。

物を置き過ぎているせいで窓からの光は 入らず、日中だというのに室内は薄暗 かった。

「いない……」

今井は立ち尽くした。

昨日来た時、猫はたしかにここにいた し、グッタリしながらも今井の腕の中で 鳴き声を上げた。

「本当に、ここ?

猫を飼うような場所じゃないけど」

メイは疑いの目で今井を見る。

「間違いないよ。

昨日はここにいたんだ……」

「他の部屋を探してみませんか?」

リクは今井の同意を求める。

「そうだね……!

家中を探してみよう!」

今井は2階を、メイとリクは1階を探す ことになった。

幼なじみとはいえ、勝手に他人の家を探 るのは非常識なこと。

だが、そうは言っていられないくらい、 今井は焦っていた。

もちろん、メイも。

今の時間、樋口が仕事に行っているのな ら、猫はこの家のどこかにいるはずであ る。

今井は考えていた。

白猫の世話をメイの家族ばかりに任せ ず、自分がシェルの面倒を見るべきだっ た、と。


リクと手分けし、メイは1階の各部屋を 探し回った。

ダイニングやリビング、南部屋の和室。

どこも物が片付かず、雑然としていた。

山積みになったスポーツ新聞。

ホコリをかぶった灰皿が、いたる所に置 いてある。

メイは時々物につまづき、それでさらに 部屋が散らかってしまったが、片付けた りなどせず、猫を探し続けた。