幸せまでの距離


それから沈黙が続いた。

リクは今井にいろいろと質問したい気持 ちを抑えつつ、メイと並んで今井の後ろ を歩いた――。


樋口の家は、待ち合わせたコンビニから 歩いて20分ほどの場所にあった。

田舎過ぎず、都会過ぎない風景。

田畑混じりの団地に位置する、二階建て の一軒家。

スライド式の玄関には鍵がかけられてお らず、今井は自分の家であるかのよう に、

「やっぱり、開いてた」

と、扉を開き、リクとメイに目配せし た。

リクは目を見張り、

「無用心ですね。

鍵してないと、危なくないですか?」

「大丈夫。この辺は治安も良いから」

「はあ……」

「それに、樋口は、こうして玄関を開 けっぱなしにすることで、ずっと待って るんだよ。

どこにいるのか分からない、両親の帰り を……」

「それって……」

今井は悲しげにうつむき、

「樋口の親は、昔から留守がちで ね……。

僕と樋口は幼なじみで、昔はよく僕もこ こに遊びに来たけど、樋口の親とは数え るくらいしか会ったことがないんだ」

「……そうだったんですか」

今井につられるように、リクはうつむ く。

樋口には、安易に尋ねてはいけない事情 がありそうだ。

メイはその話を聞いて、ますます自分と 樋口の暗部を重ねてしまっていた。

無視することはできない話である。


「猫は、2階にいるはずだよ」

二人を伴って玄関に入ると、今井は目の 前にある階段をのぼった。

リクとメイは目を合わせ、どちらかとも なく今井についていく。

家の中には、アルコールのにおいが漂っ ていた。