幸せまでの距離


樋口宅に到着する少し前、今井の勤め先 から彼のケータイに連絡が入った。

今井は今日、会社を休んだらしい。

今井はメイとリクに断ると、いったん二 人のそばを離れて電話に出たので、それ を見計らい、メイはリクに尋ねた。

「今井と、知り合いなの?」

「いや、うん、まあ、いや、ああ、 ちょっとね」

「……ふーん」

リクが何かを隠しているのは明らかだ が、探って面倒な気持ちになりたくな かったため、メイはそれ以上追求しな かった。

リクは、影で白猫探しを手伝っていたこ とを、メイに話すつもりはなかった。

今井と会ったことがあるのを内緒にする のも、そのせいである。

他に好きな人がいることにしてまで、リ クはメイとの関係改善を望んだ。

今井との面識をにごすのはメイを騙して いる感じがしてリクの気持ちは罪悪感で うわずってしまったし、メイとの間に妙 な空気が流れた気がしたが、今井が電話 を終えて戻って来てくれたので、話の流 れをごまかすことができた。

「ごめんね、待たせて。

今日、仕事サボっちゃってさ、上司に心 配かけたみたい。

行こっか。もうすぐ樋口んちに着くよ」

今井は努めて明るく振る舞っていたが、 顔色は悪いままだし、何かに焦っている ようでもある。

「家で安静にしてなくて平気ですか?」

リクは今井の横に並び、彼を気遣かっ た。

「案内してもらうだけでも助かるし、樋 口さんには俺達だけで会いに行ってもい いんで、今井さんは無理しないでくださ い……」

「大丈夫だよ。体調が悪くて休んだわけ じゃないから」

「そうなんですか?」

「昨日、樋口に会いに行ったんだけど、 それから色々考えることがあって ね……。

猫の件もふくめて、樋口とは、今日こそ ちゃんと話をつけたいから」

今井は真剣だった。

猫の話をするだけにしては、雰囲気が深 刻すぎる。