カナデとの電話を終え、メイは考えた。
カナデの交際相手・トウマは、長年舞台 俳優として劇団に所属していたが、なか なか芽が出ず、目立った役がもらえない 無職同然な生活を送っていたことから、 カナデのヒモとなっていた。
だが、最近になって主役に抜擢(ばって き)され、彼の夢は叶った。
もうすぐ、光り輝く表舞台に出ることに なる。
テレビなどに出演すれば、無名だった彼 の知名度は瞬く間に高くなるだろう。
これまでは舞台俳優として活躍できれば 満足だったかもしれないが、有名になれ ば、彼が望まなくても、劇団の意向でテ レビへの出演機会が増えるかもしれな い。
そうなると、ゴシップ写真を撮影するた め、彼を追い回すカメラマンも増えそう だ。
トウマは整った顔をしているし、実年齢 よりもずいぶん若く見える。
演技の実力も確かかもしれないが、外見 のイメージで売っていくのだとしたら、 ゴシップ記事の存在は大きい。
あることないことを書かれたりすれば、 彼の俳優人生にも傷をつけることにな る。
特に、恋愛関係にまつわるスキャンダル が起きると、芸能人は活躍しづらくなる し、ファンを遠ざけたり、最悪、売上に 響くこともある。
そういう事情から、トウマを売り出そう としている人間が、トウマにカナデとの 接触を辞めさせようとしているのかもし れない。
昔、舞台女優の経験があるメイの実母・翔子もこう言っていた。
『テレビに出るとロクなことがない』
“カナデは、トウマからそういう話聞か されてないの?”
元々メイは、トウマに良い印象がなかっ た。
彼は、カナデに生活の面倒を見てもらい ながら、メグルとも親密になろうとして いたから……。
けれど、カナデに連れられトウマのア パートに行った日、メイはトウマのことを意外に良い青年だと感じた。
メグル絡みで色々あったのかもしれない が、カナデには、トウマのそばで笑って いてほしいとメイは思っていた。


