幸せまでの距離


リクの意思を聞いて、ミズキは安堵(あ んど)した。

“間違いない。

リク君なら、メイのことを、心の傷ごと 愛してくれる……”


人には、生きているうちにいくつもの出 会いがある。

知り合いが増えるほど、自分の人間関係 は広がっていき、様々な人と交流を持つ ことになる。

自分にとって楽しかったり有意義に思え る出会いばかりなら幸福きわまりない が、中には、出会いたくなかったタイプ の人間に出くわすこともある。

『社内には、必ず3人は苦手な人・嫌な 人がいる。

それでくじけて、辞めないように』

企業の新人研修などで、上司が新人によ く言う言葉だ。


望まぬ人間関係はただわずらわしいだけ で、断ち切りたいとすら思う。

けれど、実際、日常でそれをできる人は 少なく、ストレスの元となる。

そういう観点で見れば、メイにとってリ クは必要な存在であると、ミズキは考え た。

メイは今、リクに距離を置いているかも しれない。

けれど、彼女にとってリクが不必要な存 在なら、リクの言動はこんなにもメイの 心に響かないはずだ。

相手に心底興味がなければ、こちらの気 持ちは揺るがないもの。

それに当てはめると、メイにとって、カ ナデとの出会いも欠かせないものだった と言える。


メイがミズキとの電話を終えると、一息 つく間もなくカナデから電話がかかって きた。

『メイちゃん、ごめん。

誘われてた誕生日会なんだけど、やっぱ り行けそうにないよ』

本当なら、カナデもシュンの誕生日会に 参加するはずだった。

「いいよ、私も行けなくなったから」

『そうなんだ、よかった……』

いつものカナデなら、メイの事情にもア レコレ突っ込んでくるのに、今日はアッ サリしていた。

『誰が行ってもいいって言われたから、 トウマと一緒に行く約束してたんだけ ど、今朝からアイツと連絡取れないんだ よね……』

カナデは、シュンの誕生日会に交際相手 のトウマを連れていくつもりだったらし い。

「雑誌の取材とか収録で忙しいんじゃな い?

近いうちに、テレビにも顔出しするんで しょ?」

『……今日はオフって言ってた。

でも、もうちょっとねばって電話してみ る!』

一瞬沈んだが、それを吹き飛ばすように 明るい口調で、カナデは電話を終えた。