幸せまでの距離


「俺もいろいろあって、いま、めちゃく ちゃ機嫌悪いんだよね。

そんな時にこんな場面見せつけられた ら、我慢できんわ」

ショウマは苛立ちを隠さず、メイに言っ た。

「メイちゃんさ、いったい何がしたい の?

別れ話したのに、リクを避けようとして さ。

それって、まだリクのこと好きな証拠 じゃない?」

「違う……!」

否定するメイの声は弱々しい。

「本当? だったらもう、普通にすれ ば?

リクのこと何とも思ってないのなら、避 けたり逃げたりしてる方が不自然じゃ ん」

「…………」

「それに、メイちゃんは知らないだろう けど、リクだって、もう他に好きなコい るし。

メイちゃんのこと、今は幼なじみとしか 思ってないって。

な? リク」

ショウマは汗だくのリクに目を合わせ、 “話を合わせろ!”と、視線で合図を送 る。

リクは考えた。

“ショウマは悪気があってこうしてるん じゃない……。

俺とメイのためだ、きっと。

今は、メイを好きじゃないフリをした方 が、メイに負担をかけなくて済むかもし れない”

ただでさえ、幼なじみを長年やってもメ イの心は開けなかった。

だったら、友達として彼女を理解するこ とから始めるのが望ましいのかもしれな い。

一種の賭けだが、今のリクは、ショウマ の作戦に乗るしかない。

メイはうつむき、リクの言葉を待ってい た。

「うん。もう、メイのこと何とも思って ないから。

でも、友達として、仲良くしよ?

今まで困らせて、ごめんな」

そう告げる声はうわずり、リクの胸はに ぎりつぶされるように痛くなった。

けれど、メイがこれまでに受けた傷に比 べたら、大したことはないはず――。


リクが他の子を好きになった……。

メイは小雨のような寂しさを覚えたけれ ど、恋愛感情を持たれるより良かった。

それに、こんな自分だから愛され続ける わけがない、と、リクの心変わりに妙に 納得をし、安心した。

メイはようやく肩の力を抜き、

「用事があるから、マナさんちには戻れ ない」

リクとショウマに、事情を話した。

一刻も早く、樋口の手から親猫を救い出 したい、と――。