樋口に会うと決めたはいいが、メイは樋 口宅の場所が分からず困っていた。
とりあえず、樋口の名刺と、樋口の幼な じみ・今井の名刺は持ってきたが、それ らを見ても会社の住所とケータイ番号し か分からない。
たとえ、直に会社を訪ねても、猫の保護 はできない。
こっそり、樋口の元から猫を逃がすのが 目的だったのに……。
カズにはウソの言い訳をして出てきたの に、それも意味がなくなってしまった。
そのウソを真実にするかのように、メイ は目に入ったコンビニの前で立ちつく す。
樋口宅の場所が分からないなら、彼らに 電話をするべきかもしれない。
でも、社会人の彼らは今頃職場にいて、 個人的な連絡は避けたがるだろう。
仮に、メイの電話を受けてくれたとし て、彼らは素直に口を開くだろうか?
今井という男もイマイチ信用できない し、樋口とは水掛け論になるのが目に見 えている。
こんなことなら、樋口の自宅住所も聞き 出しておけば良かった。
左手に2枚の名刺、右手にケータイ電話 をにぎりしめ、メイは思案する。
コンビニの前で佇むメイのそばを、絶え 間なく訪れる客達がポツポツ通り過ぎて いった。
見知らぬ他人を何回見送っても、メイは 考えをまとめられなかった。
自分には、親猫を助けてあげることがで きない……?
このままでは、樋口の被害にあうかもし れない親猫を見殺しにしてしまう。
これ以上進めない状況。
無力な自分。
どちらにも苛立ちを覚え始めた頃、決し て忘れることの出来ない声がメイの耳を 貫いた。
「メイ! やっと見つけた!」
うつむかせていた顔を上げると、顔見知 りの男子2人が、肩で息をしつつこちら を見ていた。
リクとショウマ。
彼らは、突然マナの家からいなくなった メイを探して、この辺りのコンビニを一 軒一軒探し回っていたそうだ。
ここで、5軒目の探索になるらしい。
コンビニの多い土地である。
頭が真っ白になり、メイは言葉が出な かった。


