女性陣がダイニングで作業をする間、カ ズは誕生日会に来る皆のために家中の掃 除をすることになった。
ケーキが完成し、料理の準備が整うと、 12時を少し過ぎていた。
ケーキが冷蔵庫にしまわれると、メイは ひそかに、ここを抜け出したいと考えて いた。
頼まれていたケーキ作りは無事に終えた のだから、一刻も早く樋口の家に行っ て、親猫の様子を見に行きたい。
ダイニングに続くリビングの整頓をして いたマナが、掛け時計を見て、
「そろそろ、リク君とナナセ君も来るか な?」
使った器材を洗っていたメイは思わず手 を滑らし、シンクの中で激しい音を立て てしまった。
隣で洗い物を拭いていたミズキは、
「大丈夫?」
「うん。洗剤付けすぎただけ」
とっさにそんな言い訳をしてしまった が、内心メイは、動揺していた。
自分の中に、まだ、リクの存在があった こと。
彼の名前を聞くだけで、息苦しいほどに 胸が苦しくなること。
不自然なくらい、顔に熱を持ってしまう こと。
最近、猫達の件や専門学校の忙しさで考 えずに済んでいた想いが、一気に体中に 流れ込んできた。
重くて深い、感情の海――。
そうだ。リクもシュンの友達だった。
今日、ここに来るのは当然のこと……。
でも、今さらどんな顔をしてリクと会え ばいいのか。
“リクには、二度と会わないつもりだっ たのに……”
ミズキはメイの変化を見て、
「メイ、顔色悪いよ?
あとは私がやるから、休んでて?」
そこへマナもかけより、
「無理させてごめんね。
こんなに洗ってくれて、ありがとう」
マナとミズキに支えられつつ、メイはリ ビングのソファーに座った。
メイの体中から、気力という気力全てが 奪われていくようだった。
こうしているわけにはいかない。
早く、早く、樋口宅を訪ねなければ ――。


