幸せまでの距離


ミズキとマナの大学だけでなく、カズの 通う南高校も今日からゴールデンウイー クに突入した。

着替えてダイニングに戻るなり、カズは ケーキ作りの仕上げをしているメイに、 人懐っこく話しかけた。

「メイちゃんと会うの、初めてだよね」

「うん」

カズの方を見ず、メイは作業の手を進め た。

「姉ちゃんから話は聞いてたけど、器用 なんだね。

すごい、このデコレーション!」

「別に……」

黙々と手を動かすメイの横で、カズは一 人、テンション高くはしゃいでいる。

「メイちゃんの邪魔になるでしょ?

アンタはテーブルの上でも片付けてきな よ」

マナは注意したが、カズはメイのそばを 離れなかった。

「だって、こんなに上手にケーキ作れる 人、身近で初めて見たもん!

見てなきゃ損じゃん」

「まあ、それは分かるけど……」

マナも、カズに合わせるようにしてメイ の作るケーキを見ていた。

ミズキのケーキは食べたことがあるけれ ど、作っている場面はなかなか見られな い。


メイが作ったケーキは2種類。

一般的なショートケーキと、ザッハトル テと言う名のチョコレートケーキであ る。

「早く食べたいな~」

カズはホクホクした表情でそれを見てい た。

まるで、おやつの時間に期待を寄せる子 供のようだと、メイは思う。

ミズキは、幸せな気持ちでその様子を見 守っていた。

このままメイに、自然体で居られる場所 が増えるように、と、願いながら……。