料理の下準備とケーキ作りが終わりに近 づいてきた頃、騒々しい足音がダイニン グに割り込んできた。
マナの弟・カズである。
カズは、ダイニングの扉を勢いよく開 け、
「お腹すいたぁ……。
あれ? ミズキちゃん……?
おはよ!!」
と、ミズキとメイが居ることに不思議そ うな顔をしつつ、昼前なのを無視して朝 の挨拶をした。
思わぬ人物の登場に、メイは驚き、固 まってしまう。
マナはうんざりした顔でカズに言った。
「今日はシュンの誕生日会。
ミズキちゃんとメイちゃんが朝から手伝 いに来てくれるって、何回も言ったじゃ ん」
「あっ、そっか!
思い出した」
カズのおどけた様子に、ミズキは思わず 笑みをこぼしたが、マナは手厳しく、
「大事なこと、すぐに忘れるんだから。
アンタも、早く着替えて手伝って」
「姉ちゃんだって、どうせ寝坊したんで しょ?
朝弱いクセにさー、張り切り過ぎなんだ よ」
マナは無言で、カズの背中にこぶしを振 るう。
「いってぇ!」
カズは涙目になる。
「姉ちゃんのパンチは凶器なんだから、 簡単に使わないでよ。ううう……」
「アンタがナマイキだからでしょ」
もう一発お見舞いしてやる勢いで、マナ はカズを見た。
「姉ちゃんごめん、すぐ用意するか らっ」
カズはスタスタと洗面所に引っ込んだ。
再び、作業に戻った3人。
「マナさんの弟……?」
硬直状態から放たれたメイは、ようやく そうつぶやいた。
「うん。バカみたいなヤツでしょ?
せっかく準備してたのに、邪魔が入って ごめんね」
マナは苦笑し、メイを見る。
「……ううん。別にいい」
見て男性だと分かるのに、異性を感じな い男。
カズに対し、メイはそんな印象を抱い た。
マンガやアニメのキャラクターに出てき そうな、憎めない系の男子。
この頃、樋口という強烈な大人に出会っ たことで、感性がマヒしてしまったのだ ろうか。
カズとの出会いは、メイには印象的に 残った。


