自分を責める人がいない、気楽な学内。
一人暮らしのアパート。
それらを往復しつつ、今井は考えた。
なぜ、これまでマユミと付き合ってきた のだろう。
どうして、彼女に中絶手術をさせてし まったのだろう。
もしかしたら、他にもっと良い道があっ たのではないだろうか?
世の中には、やむを得ない理由で堕胎す る女性もいるのだ、と、なんとなく知ってい た。
だからといって、未熟な自分達が安易に それを行って良かったのだろうか?
大学を辞めて、授かった子供を育てれば 良かった。
自分が選んだ答えは、とんでもなく間 違っていた気がする。
毎日のように、今井は悩んだ。
日毎に変わる考え。
これで良かったんだと思える日もあれ ば、一生を左右する選択をしてしまった のだと苦しむ日もあった。
『もしマユミと別れても、お前には、他 の女相手でも結婚する資格はない!』
ある日、マユミの父親から電話越しに言 われた言葉が、真っ暗に染まった今井の 精神を粉々にした。
「マユミが好きだから」という理由で性 行為に及んでしまった自分が、だんだん と、汚らわしい悪魔のように思えてく る。
こんな自分、生きている資格すらないの ではないだろうか。
ひとつの命を消しておいて、自分のため に生きることなんて、許されないのでは ないだろうか――。
「若かったから」と、若さを言い訳にす るのは簡単だが、当時の今井の苦悩は、 そういう単純な理由をもってしても表現 できない、深いものだった。
自分のしたことが許されるとは思わな い。
現に、マユミの心と体を傷つけてしまっ た事実は大きい。
だからこそ、周りの大人は何度も自分を 責めてくるのだ……。
わかっていたが、毎日自分を否定される 生活の中で、今井の気持ちは限界を迎え た。
だからといって、ずっとマユミからの連 絡を無視しているわけにはいかない。
久しぶりに彼女の電話に出たら、こう言 われた。
『最近連絡くれないけど、浮気してるん じゃないの!?
どうせ、こんな私は、もう用済みなんで しょ!?
めんどくさいだけでしょ!?』


