幸せまでの距離


ミズキとの電話を終え、リクはケータイ をしまった。

目の前には、夕日に照らされた大通り。

猫探しの途中で、こうして猫が見つかっ たと報告を受け、リクはやや驚いてい た。

もちろん、猫の行方が分かって安心した し、今井という男性が樋口の情報を教え てくれたのは救いだが、どうにもスッキ リしない。

“俺が、猫を見つけたかった……”

親猫が樋口の元に戻ったと知ったら、メ イはどう思うだろう?

少なくとも、喜びはしないのでは?

“ミズキちゃんは安心してるみたいだっ たけど、メイは大丈夫かな?

明日はシュン君の誕生日だけど、猫のこ とを知ったら、それどころじゃなくなる んじゃ……”

頭の中は、シュンの誕生日を祝うことよ り、メイとの再会でいっぱいになる。

“メイ、元気でいてくれるかな。

専門学校の授業、頑張ってるかな。

過去に、苦しんでないかな……”

明日のことを思うと、リクの胸は早鐘を うつように高鳴った。

と、同時に、彼女の生活に関われない今 の自分は寂し過ぎるので、どうにかして その状況を抜け出し、彼女のそばにいら れますよう――。

見えない明日に、精一杯の祈りを捧げ た。

もしも願いが叶うなら……。

“世の中から、悪を無くしたい”

ミズキから樋口に関する黒い話を聞い て、なおさらそう思った。

“メイが幸せに生きられる世界を、作れ ますように。

誰も傷つかずに済む世界が、実現します ように”

柔らかくも切なげな春の夕闇に、リクの 願いはうっすらとけていった。