「幼なじみだったし、学校も同じだか ら、縁を切るなんて無理に決まって る……。
長年、自分にそんな言い訳をしつつ、結 局のところ私は、樋口を憎み切れないん です。
それに妻は、いまだに樋口のストーカー 行為のことを知りません。
されたことは覚えていても、誰が犯人か までは、今も気付いていません。
妻を傷つけたくないから本当のことは言 えませんし、それと同じくらい、樋口を 悪者にしたくないとも思うんです……」
友達なのを理由に、何でも見逃し、許す んですか?
妻の気持ちは無視ですか?
ミズキは言いかけ、口をつぐんだ。
“今井さんは、私と同じだ……”
今井の矛盾に反感を持つ一方で、ミズキ は思った。
自分も、過去にメイが犯した罪を見逃し て許し、妹にして愛情を注ぎたいと思っ たし、実際、そうしている。
もっとも憎むべき宇野マサヤという同級 生に対しても、彼に謝罪された結果、法 的に罰するという選択はしなかった。
今井は、樋口に対してそういった複雑な 感情を抱いて、苦しんでいるのかもしれ ない……。
「樋口は、許されないことをしてきまし た。
昔の同級生にも、動物にも、そして、妻 に対しても……。
もちろん、星崎さんが、私や樋口に疑問 を感じるのは当然です。
でも……。それでも私は、樋口のことを 責めることが出来ません。
端(はた)から見たら、樋口は悪い印象 しか持たれないようなことをしています し、私も彼を恐れています。
でも、心の底から嫌いにはなれないんで す……」
「……どうして、樋口さんに猫を譲った んですか?
どうして、ここに来て、そういう話をす るんですか?」
静かな気持ちで、ミズキは訊く。
今井に、悪気はない――。


