幸せまでの距離


樋口と今井は生まれた頃から家が近く、 高校に入学する前までは同じ学校に通 い、なにかと行動を共にしていた。

しかし、高校で進路が分かれてからは、 二人が顔を合わせることも減り、大学生 になってからはさらに関わる機会が減っ た。

今井だけ他県の大学に行って、一人暮ら しをするようになったからだ。

それでも今井は、地元で就職した樋口に はマメに連絡をしていたし、そのたび樋 口は、今井に友好的に接していた。

「樋口さんと今井さんは、同い年だった んですね」

「ええ。よく、樋口の方が歳上に見られ ますけど、私達ももう、31になりまし た。

あの猫を買ったのは25の時……。

結婚を機に、彼女と一緒に育てていこう と思って買ったんです。

……妻とは、中学の頃から付き合ってい ました。

彼女のことは、樋口もよく知ってます」

10年の交際を経て、今井と彼女は結婚 し、白猫を飼うことに決めた。

今井が結婚して数日後、彼は樋口から本 音を聞かされることになる。

「深夜、突然ウチに訪ねてきて、樋口は 言いました。

『猫をよこせ』って……」

結婚後今井は、実家近くにペット可のマ ンションを買い、妻と住み始めた。

樋口の家から、目と鼻の先にある。